豆知識のページ

拒絶理由と無効理由



・技術的特徴の異なる別発明への補正を禁止する17条の2第4項違反は、拒絶理由になりますが、無効理由にはなりません。

・先行技術文献の開示違反は拒絶理由にはなりますが、無効理由にはなりません。
 これを無効理由にしてしまうと、無効審判が多発する可能性があるからです。

・特許請求の範囲は経済産業省令で定めるところにより記載しなければならない規定は、
 拒絶理由にはなりますが、無効理由にはなりません。手続き上の瑕疵であり、実体的に瑕疵があるわけではないからです。

・発明の単一性違反は、拒絶理由にはなりますが、無効理由にはなりません。
 手続き上の瑕疵であり、実体的に瑕疵があるわけではないからです。

・外国語書面出願について補正の際の翻訳文新規事項追加違反は、拒絶理由になりますが、無効理由にはなりません。
 誤訳訂正書を提出すべきところを手続補正書にて補正したことにすぎないからあり形式的瑕疵にすぎないからです。

・冒認・共同出願違反は拒絶理由になりますが、移転請求後の冒認・共同出願違反は無効理由にはなりません。




商標法 3条

商標法3条は、登録要件について定めています。
「自己の業務に係る商品または役務について使用する商標であること」「特別顕著性のある商標であること」が求められます。
「自己の業務に係る商品または役務について使用する商標であること」とは、現在使用しているもののみならず、
近い将来使用する意思があって、かつ信用の蓄積がなされるだろうと推定されることが求められます。
また「特別顕著性のある商標であること」とは、3条1項各号に規定されており、

・その商品または役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
・その商品または役務について慣用されている商標
・その商品の産地、原材料等、または役務の提供の場所、質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
・ありふれた氏または名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
・極めて簡単、かつありふれた標章のみからなる商標
・前各号に掲げるものの他、需要者が何人かの業務に係る商品または役務を表示するものとして認識することができない商標

については特別顕著性がないものとして、登録を受けることができないとされています。




商標法 商標の類否判断

商標の類否判断は、「称呼」「外観」「観念」を総合的に考察し、商標が使用される商品または役務の主たる需要者層
その他商品または役務の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断します。

「称呼」とは、聴覚を通じて認識される商標の呼び方のことです。
「外観」とは、視覚を通じて認識される商標の見た目のことです。
「観念」とは、知覚を通じて認識される商標の意味のことです。




商標法 標章の使用2条3項各号

・商品または商品の包装に標章を付する行為
・商品または商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引渡し、譲渡もしくは引き渡しのために展示し、
 輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提・供する行為
・役務の提供にあたり、その提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為
・役務の提供にあたり、その提供を受ける者の利用に供する物に標章を付した者を用いて役務を提供する行為
・役務の提供の用に供する物に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
・役務の提供にあたり、その提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
・電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供にあたり、その映像面に標章を表示して役務を提供する行為
・商品もしくは役務に関する広告、価格表、取引書類に標章を付したものを展示し、頒布し、
 又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

商標は使用されてはじめてその機能を発揮します。
使用していない場合は、登録が取り消されることもあります。
商標の不使用 の場合の審判について書かれているサイトがあるのでご覧ください。




特許法 訴訟

審決に対する訴え、審判・再審の請求書又は訂正の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄となります。
審決等に対する訴えは、①当事者、②参加人、③当該審判もしくは再審に参加を申請して拒否されたものに限り提起できます。

一般の行政処分であれば法律上の利害関係がある第三者までに原告適格を与えてもいいところ、
特許権は対世的なものであり、利害関係がある第三者の範囲は著しく広範なものになります。
このすべての者に原告適格を認めてしまうと、裁判渋滞の原因となるおそれがあります。
一方、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」という憲法32条を考慮して、
当該審判もしくは再審に参加を申請して拒否されたものにまで原告適格を与えています。
出訴期間は、審決または決定の謄本の送達があった日から30日以内です。




特許法 職権探知主義

審判においては、当事者もしくは参加人の申し立てにより又は職権で、証拠調をすることができる(150条1項)。
審判請求前は利害関係人の申し立てにより証拠保全できます(150条2項)。
審判の係属中は当事者もしくは参加人の申し立てにより又は職権で証拠保全できます(150条2項)。
さらに審判において、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができます(153条1項)。
ただし、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができません(153条3項)。




特許法 前置審査

拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、
その査定の謄本の送達があった日から3月以内に拒絶査定不服審判の請求をすることができます。
その拒絶査定不服審判の請求と同時に補正をした場合には、事件は前置審査にふされ、
拒絶をすべき旨の査定をした元の審査官により再び審査が行われ、
補正が適法であるかどうか、特許をすることができるかどうかが審査されます。

拒絶査定不服審判において拒絶査定が覆るものの多くが、
拒絶査定不服審判と同時に補正をした場合のものであり、拒絶査定をした審査官に再審査させることにより、
その補正により特許できるかどうかが直ぐに判断できることが多く、事件の迅速な解決が望めます。

これにより審判官が処理すべき事件の件数を減らすことができ、審判の促進をはかることができます。
仮に前置審査がなく、審判官が審理するとしたら、審判官がその出願について一から取り組まなければならず、
審判事件の処理が長期化するという問題が生じる可能性があります。




特許法 保証金請求権

特許出願人は、出願公開があった後に、所定の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、
その警告後特許権の設定の登録前に、業としてその発明の実施をした者に対し、
その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭に相当する額の保証金の請求をすることができます。

保証金請求権を行使するためには、警告していることが条件となりますが、
相手が特許出願がされた特許出願に係る発明であることを知って
特許権の設定登録の前に業としてその発明を実施していた場合には警告は不要となります。

保証金請求権は、特許権の設定登録後でなければ行使することができません。
出願段階では、特許されるかどうかが不明であり、その後の調整が困難となるからです。
特許権の設定の登録前に実施の事実及び実施者を知った場合には、設定の登録の日から3年以内に行使する必要があります。
また特許権の設定の登録後に実施の事実及び実施者を知った場合には、知った時から3年以内に行使する必要があります。




特許法 先使用による通常実施権

先使用による通常実施権とは、「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、
又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、
特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、
その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、
その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。」もののことをいいます。

先使用による通常実施権は、先に発明を実施していた者と特許権者との公平の観点から認められており、
また既存の事業設備の荒廃を防止することを目的として設けられている制度です。
先使用による通常実施権は、実施の事業とともにする場合、
特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転をすることができます。




特許法 国内優先権

国内優先権とは、「特許を受けようとする者は、その特許出願に係る発明について、
その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用新案登録出願であつて
先にされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された
発明に基づいて優先権を主張することができる。」もののことをいいます。先の出願の日から1年以内に行う必要があります。

先の発明の出願の後に、その発明と後の改良発明とを包括的な発明としてまとめた内容で特許出願をすることを認め、
技術開発の成果が漏れのない形で円滑に特許権として保護されることを目的として設立された制度です。

先の出願は、先の出願の日から1年3月経過した時に取り下げられたものとみなされます。競合出願を排除し、
重複審査、重複公開を回避するためです。国内優先権の主張をした時点で直ぐに先の出願を取り下げてしまったら、
出願人が誤って国内優先権の主張をした場合などに刻であり、また出願公開のための準備に入る時期を考慮して、
先の出願の日から1年3月経過した時に取り下げられれるとしています。

分割、変更、実用新案登録に基づく特許出願は、国内優先権主張の基礎とすることができません。
分割や変更などの要件を満たしているかどうかの審査が必要となり、審査上も第三者のサーチ上も負担が増大するからです。

国内優先権の主張をするための要件としては、先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、
その特許出願の際に、その承諾を得ている必要があります。
その他の要件としては、先の出願が、その特許出願の際に、放棄され、取り下げられ、
又は却下されている場合は国内優先権の主張の基礎とすることができません。
先の出願について、その特許出願の際に、査定又は審決が確定している場合は国内優先権の主張の基礎とすることができません。
先の出願について、その特許出願の際に、実用新案法第十四条第二項に規定する設定の登録がされている場合は
国内優先権の主張の基礎とすることができません。




特許法 出願審査の請求

特許法では、特許出願をしてから3年以内に出願審査の請求をしなければなりません。

出願審査の請求がなければ、審査は行われません。
原則的に、出願審査の請求は、特許出願の日から3年以内にする必要があります。
例外として、分割、変更、実用登録新案に基づく特許出願については、もとの出願から3年を経過したあとであっても、
新たな出願の日から30日以内であれば出願審査の請求をすることができます。

出願審査の請求は、出願人に限らず何人もすることができます。
出願に係る発明を実施したいと考えている第三者が、早くその出願の決着をつけたいと考えている場合などに、
出願審査の請求をして審査段階に移行させる必要があるからです。
第三者から出願審査の請求があった場合、特許庁長官は出願人にその旨を通知します。

出願審査の請求は取り下げることができません。
取り下げを認めると、これまでの審査が無駄になってしまう可能性があるからです。
また出願の取り下げが認められているので、出願審査の請求の取り下げを認める実益がないからです。

国際特許出願の場合には、原則として国内書面提出期間の経過後でなければ出願審査の請求をすることができません。
例外として、184条の4第1項但書の場合の外国語特許出願にあっては、
翻訳文提出特例期間経過後でなければ出願審査の請求をすることができません。
PCT条約23条、40条の要請により、国際出願においては、出願人からの明示の請求がある場合を除き、
国内書面提出期間が経過するまでは、締約国の国内官庁は処理及び審査をしてはならないことになっているからです。






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